我が国の製材産業が一変、量産の草分け
[国内で丸太から製材されたベイツガ]
北米産のベイツガは戦後、不足する杉などの国産材針葉樹の代替として、大量に輸入されてきました。1960年代には、大阪、清水、田辺、和歌山、徳島、広島、福岡、鹿児島など全国の港湾に、北米西海岸から大型バルク船で満載されたベイツガ丸太が大量に入荷し、これを製材する大型製材工場が林立し、日本の製材産業規模を一変させたと言われます。
これらの国内挽き産地で製材されたベイツガ製品は、全国に供給されました。ベイツガは日本の戦後復興から高度成長期を支えてきた木の象徴です。1970年代からは本格的なベイツガ現地挽き製材の時代が到来し、円高ドル安基調が強まるとともに供給が加速していきました。
木造軸組住宅の構造材・羽柄材・下地材、住宅全般の造作・建具材、さらに土木産業用材と幅広い木材需要に呼応してきました。木造軸組住宅の土台に使用する樹種では、長年にわたりベイツガを防腐防蟻処理した注入土台が圧倒的な市場シェアを占めてきました。
また、窓枠材、内装ドア枠材、押し入れ等の収納部材の原材料としてもベイツガが多用されてきました。土木産業用では、バタ角や桟木のほか、鉄道枕木(注入処理)にも向けられました。また、製紙原材料としてもベイツガの製材チップは重要な原材料でした。
ベイツガは、十分な柾目取りが可能な大径木資源が豊富であったこと、日本人に好まれる白木系であること、通直丸太で加工がしやすく、木目が細やかでペンキをはじめ塗料との相性が良いことなどが評価されました。しかし、何よりも圧倒的な供給安定性と価格競争力が強みでした。
[北米から輸入された目細のベイツガ丸太]
現在は往時の供給力は後退し、欧州産針葉樹や杉をはじめとした国産材針葉樹の台頭で厳しい状況にありますが、釘の保持力が高いという特徴もあり、長年、ベイツガに慣れ親しんできた大工さんなどは今も、ベイツガを指定してきます。
国産の栂(ツガ)もベイツガと同じ科目です。国産の栂は天然林供給が大半なことから、今や希少樹種となっており、製品市場に栂の出物があると沸き立ちます。関西では栂普請が、桧普請より格上とされてきました。